上映時間 116分
製作国 スウェーデン
原作 フレドリック・バックマン『幸せなひとりぼっち』(早川書房刊)
脚本:監督 ハンネス・ホルム
出演 ロルフ・ラッスゴード/イーダ・エングヴォル/バハール・パルス
本国スウェーデンでは公開時、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(15)を抑え
5週連続1位の記録的大ヒットを樹立。
同国で、実に約5人に1人が観たという国民的映画になった作品。
最愛の妻ソーニャを病で亡くし、長年勤めてきた仕事も突然のクビを宣告されてしまった59歳の孤独な男オーヴェ。すっかり絶望し、首を吊って自殺を図ろうとした矢先、向いに大騒ぎをしながらパルヴァネ一家が引っ越してきた。自殺を邪魔されておかんむりのオーヴェだったが、陽気な主婦パルヴァネは、そんなことお構いなしにオーヴェを積極的に頼るようになっていく。何度も自殺を邪魔された上、遠慮のないパルヴァネに最初は苛立ちを隠せないオーヴェだったが…。
一つの商品に2つの値段(一束だと〇〇、でも2束だと△〇)
敷地内にマーキングしまくる犬と飼い主
白シャツの男と車とタバコのポイ捨て
そんなものに腹立ちを抑えられないオーヴェの毎日・・・
近所の評判も「規律に厳しい人間」なんてものではなくなって、
年齢を重ねてからは気難しさに拍車がかかり、「厄介なおじさん」と化す。
誰からも望まれていない共同住宅地の監視、そして妻の墓に花を手向け、
亡くなった妻以外は「バカばっかりだ」と嘆き、、、
イザ恋しい妻の許へ――と、その時、騒々しく向かいに越してきたパルヴァネ一家の車が!!
頑なで怒りっぽい、孤独なオーヴェ・・・。
幼い時に母を亡くし、学生時代に父を亡くし、しかし
そのことで父の会社に就職できたが、
隣家の火事で家を失い焼け出され・・・でも、そのおかげで最愛の人と出会い。。。
幾度となく困難に見舞われ、
それでも、闘って生きてきた――
でも、この世はバカな奴らばかり、、。早くソーニャに会いたい・・・のに!!
パルヴァネ一家はそうたやすくオーヴェを死なせてくれない。
しかも、何故かいつも家の前に来る猫とか、
ソーニャの教え子の面倒にもかかわってしまい、と
退屈だった不機嫌ジィの生活は激変し…―
孤独で偏屈な爺と異民族との交流、というとグラン・トリノを思い出しますが、
ここでもオーヴェの国産車・サーブ愛が描かれて、父との思い出に繋がっていたり
友との可笑しな意地の張り合いにも一役買ったりと、いい具合に使われていました。
「他人に左右されてばかりの人生だった」と、オーヴェが回顧するのですが、
多かれ少なかれ、誰の一生も出会った人によって左右されているのじゃないかと思います。
最愛の人と出会い、そして失い、人生最悪な時に押し寄せる「他人からの頼み事」
彼にとっては何でもないことが、「他人」にとってその時必要なこと。
今生きる事で積極的なパルヴァネと、死ぬ事が目下の課題のオーヴェが出会い(笑)
この二人が動く度に「他人」との繋がりが増えていくのが面白い。
波乱に満ちたオーヴェの人生に胸をアツクし、
そして、スウェーデンの福祉の実態に少し驚き、
いつか来るかもしれない、一人になって生きる時間を、ちょっと想像してみたりしながらも
甘くも悲しくもある「人生」を感じて、いい作品でした。