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遺体 明日への十日間

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2011年3月11日
あの未曾有の災害に直面し
困難な状況と向き合った人々がいた

彼らには、
悲しむ時間さえ無かった
上映時間 105分
原作 石井光太
脚本:監督 君塚良一
音楽 村松崇継
出演 西田敏行/緒形直人/勝地涼/國村隼/酒井若菜/佐藤浩市/志田未来/筒井道隆/沢村一樹/佐野史郎

2011年の東日本大震災で被災した岩手県釜石市の遺体安置所を題材としたルポルタージュ
「遺体 -震災、津波の果てに-」を基に、メディアが伝え切れない被災地の真実を描き出したヒューマン・ドラマ
東日本大震災の発生直後。定年まで葬儀関係の仕事に就いていた相葉常夫(西田敏行)は、仕事柄遺体に接する機会が多かったことから、遺体安置所でボランティアとして働くことになる。一人一人の遺体に優しく話し掛ける相葉の姿を見て、膨大な遺体に当初は戸惑っていた市職員たちも、一人でも多く遺族のもとに帰してあげたいと奮闘し続ける。

本音を言うと、歴史的大災害などをもり込んだ作品は、基本的に観たくない。
大抵が別の話になってしまうような気がするからです。

この作品も、フジテレビだし、、ちょっと不安はありましたが、さすが
『誰も守ってくれない』ではモントリオール世界映画祭最優秀脚本賞を受賞した君塚良一さんです。
実際に取材した原作者の想いを汲んだ作品となっているのではないでしょうか。

ご覧になれば解りますが、この作品には、3.11以来何度も観て、
私たちを凍りつかせたあの黒い津波の映像はありません。
地震によって困惑している、釜石の高台の人たちが、自身も被災しながら、
津波で被害にあわれた人々の遺体安置所の場に立つことになる、市の職員や医師、ボランティアの方たちの
立ち止まる事の許されない現場を、静かに映していくものでした。


穏やかだった日常は奪われても、停電の為、全く被害状況が解らないまま
呆然とし、何から手をつけていいのか解らない人々。混乱した現場の雰囲気も、
その場にいなかった誰にも伝わってくるものがありました。

キャストの皆さんが、「演技とは思わなかった」という、
それは、心を添わせた結果だからでしょう・・・。

それこそ、寝食を忘れるほどの何百という遺体に接し、その中には親しい方も運ばれてくる。
それでも悲しみに浸っていられない現実。
犠牲者を一刻も早く家族と再会させてあげたいという想いは、少しずつ
何が必要で、どうしたら遺体や遺族を慰められるのかという行動に示されるようになるのです。

電気も水もない、食料もない中で、
市役所の職員は、ある人は遺体を運び続け、ある人は遺族にご遺体を案内し続ける。
医師は嘗ての自分の患者や友人であれ、検視やDNA採取などの手を止められない・・・。

以前私も記事にした事もある、救援物資が、避難所には送られるものの、
避難所には行かずに自宅に留まる被災者や、ボランティアにはいかなかったという事実も
サラリと描かれています。
避難所に行かず、この過酷な現場でボランティアをしていた人は、飢えていた・・・
町が機能していない状態で、自宅にいた人たちは、取り残されていたのですよね。。。

僅かな計画停電でも不自由だったまだ寒いあの日、あの頃。。。

―やるしかない。やるべし。―
被災地の一角で、誰も経験したことのない物語はこうして始まっていました。

この作品にはモデルとなった方が沢山いらっしゃり、その方たちの了解を得ての映画化となったようですが、
原作にほぼ忠実に描かれていると現場を目撃した作者は仰っています。
おそらくは、映画で公開できる一歩前の段階で収めた1時間5分。
作り手側の良心がソコにあると思います。

スタッフも泣きながら撮っていたといいます。
泣いてもいい、映画です。

再度、この映画の収益金は、被災地に寄付されるそうです。是非多くの方に観て戴きたい作品でした。

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