人生はかくも長く、
素晴らしい。
原題 AMOUR/LOVE
製作年度 2012年
上映時間 127分
監督 ミヒャエル・ハネケ
製作国・地域: フランス/ドイツ/オーストリア
出演 ジャン=ルイ・トランティニャン/エマニュエル・リヴァ/イザベル・ユペール/アレクサンドル・タロー/ウィリアム・シメル
パリの高級アパルトマンで悠々自適の老後を送る音楽家の夫婦、ジョルジュとアンヌ。ところがある朝、アンヌが突然の発作に見舞われ、夫婦の穏やかな日々は終わりを迎える。検査の結果、病気が発覚したアンヌは手術の失敗で半身に麻痺が残る事態に。“二度と病院には戻りたくない”とのアンヌの願いを聞き入れ、ジョルジュは自宅での介護を決意する。自らも老いた身でありながら、これまで通りの生活を貫こうとする妻を献身的に支えていくジョルジュだったが…。
満ち足りた夫妻の日々に、突如訪れる「老老介護」生活。
そしてその先に続くのは、失いゆく人としての尊厳と介護する側の孤独と葛藤―。
老いを認めながらも、次第にあらゆる自由を失っていくという事は、頭の隅に追いやって、
誰しもが、出来たら死ぬまで誰にも迷惑をかけることなく死を迎えたい。
それでも、どちらかが倒れた場合、、選択しなくてはならない。
家族の負担を減らし、施設に行くのか?
自宅で介護サービスを受けながら過ごすのか?
その辺りの夫婦の想い、娘の心理も絡めて、
介護経験者には3者3様のアルアル感がびっしり詰まっていて、苦しくなるほど。。。
介護する側の負担を軽減するはずの、プロを自認するヘルパーとの諍い。
アンヌにとっては、金銭に換えられない、愛する人との生活。
ジョルジュにとっては、何物にも代え難く守ってやりたい、人としての尊厳…。
しかし、日に日に衰えゆく自分―。
…アンヌの決心を知って、
ジョルジュも心を決めるのですが、
この仲良し夫婦の結末を、私はなぜか社会の所為にはしたくない。
その長き善き人生の最終章―、老いはかくも残酷で非情。しかし、愛は
そして、2人は闘い、護り、選び取った…―。私には、そう思えるのです。
それにしても、エマニュエル・リヴァのとことん老いを曝け出す演技は圧倒的。
老いに向かう覚悟はできているのか?と突きつけてきます。
男性にとってはジョルジュの姿が胸に迫ってくるのでしょうね。
アンヌの愛弟子のピアニスト・アレクサンドル役でアレクサンドル・タローが出演していて
演奏する姿がほんの少しですが観られますもっと観ていたかった!
本編中の音楽も彼が担当していたんですね、ファンは必見です
ヘルパーとの摩擦の時は「最強のふたり」を思い出し、
夫婦のラストには「死を処方する男 ジャック・ケヴォーキアンの真実」を思い浮かべました。
ジャックには、心の痛みと不自由さから解き放たれた患者の姿が、
この作品のラストの仲睦ましい2人のように、、人生の続きが見えていたんだと
そんな気がしました。。。