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Channel: to Heart
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偽りなき者

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決して、譲れないものがある――
原題 JAGTEN/THE HUNT
製作年度 2012年
製作国・地域 デンマーク
上映時間 115分
脚本 トマス・ヴィンターベア 、トビアス・リンホルム
監督 トマス・ヴィンターベア
出演 マッツ・ミケルセン/トマス・ボー・ラーセン/アニカ・ヴィタコプ/ラセ・フォーゲルストラム/スーセ・ウォルド
親友の娘クララの作り話が原因で、変質者のレッテルを貼られてしまったルーカス(マッツ・ミケルセン)。クララの証言以外に無実を証明できる手段がない彼は、身の潔白を説明しようとするが誰にも話を聞いてもらえず、仕事も信用も失うことになる。周囲から向けられる憎悪と敵意が日ごとに増していく中、ルーカスは自らの無実を訴え続けるが……。

予告の冒頭、
子供と酔っ払いは嘘をつかない―デンマークの諺 と。
そんな諺があるんですねぇ・・・私の経験では、酔っ払いは他愛もなく嘘をつくものだとばかり
呑んでても呑んでナイ、酔っていても酔ってないだし......子供は嘘をつく......

舞台はデンマークの小さな田舎町。
主人公は離婚して息子にも会えないでいる、幼稚園に勤務する元教師の分別あるルーカス。
そんな彼を取り巻く友人達とその家庭、彼を取り巻く環境が
序盤にテンポよく語られ、
親友の娘クララとのある日の出来事のあと、少女は口にする―
「私、ルーカス嫌い・・だって、、、、」

幼い少女がたったひとつの嘘をつく。
その嘘を真に受けた「子供を知らない大人」によって、
少女は弁明の機会を奪われ、大好きなルーカスは酷い目にあっていく…―

園長先生にもチラッと言ったのに、
ママにも、直ぐにホントの事言ったのに…―

思い込んだ大人たちは耳を貸さず、いきなり皆全身鉄の鎧で覆われた騎士にでもなったように、
ルーカスを迫害する事が善人の証のようになってしまった。
両親もケンカしなくなったし、あのお兄ちゃんでさえ凄くやさしくなったけど、、
いくら幼稚園児でも、ルーカスが酷い目に遭っているのは解る。。。


ここからはかなりネタバレしてます

変質者の烙印を押され、友人を失い、職場を追われ、早速街ぐるみの迫害を受ける。
四面楚歌の中で、精神的、経済的、身体的ダメージを受けながら、それでも
彼を無条件に信じる息子・マルクスとともに折れそうな気持ちを振り絞り、踏ん張っていた。

ただ一人、彼を信じ続けるマルクスの名付け親を除いては、誰も彼の言葉に耳を貸さず、
スーパーでは食品を売って貰えず暴力で阻止しようとさえする嘗ての友人に、
理不尽な仕打ちに観客は怒りで腸が煮えくり返りつつ、この親子の味方になる。が、
投石で家を壊され、善良な親子は脅かされ、、、ついにソレは愛犬にも及ぶ…―
それでもルーカスは、最大限の大人の良識を持って「何もしてない」としか言わない。
彼は最後までクララを守る。
それはきっと、彼はクララの幼い自尊心を傷つけた事を知っていたから。

線が怖くて下ばっかり見て歩き、ファニーが好きで、いつも優しかったルーカスはもっと好きなクララ。
しかし、教育に携わる大人として当然と信じた行為であったと思う、あの日のルーカス。

所謂、証拠不十分というのか、立件見送りなのだと思うが、
流石、地下室の件で園児の作り話が証拠となり、ルーカスの嫌疑は晴れ釈放されたのに、
クララの嘘は町の人を信じ込ませていて、、、、やがてクリスマスイブの日がやってくる…

ところで、邦題の、恐ろしく古めかしいタイトルでは興味を惹かれなかったのですが、
コレ、原題はJAGTEN=THE HUNT 狩りという意味なんですね〜。
この邦題では、無実に屈服しないルーカスの戦いに焦点を当てて観るようになるけど、
原題のTHE HUNT の意味を知るラスト―。
一度烙印を押され、標的となってしまった者の言い知れない恐怖を味わう作品となりました。

キルスティン・ダンスト似のクララ役の子が巧過ぎです!
斜め45度の切ない眼差しが女心を掴むマッツ・ミケルセンは、キリアン似の憂い顔
一番教育の現場に合わない対処のまずさで、ルーカスに取り返せない損害を与えた
園長のグレテが腹立たしいという思いでしたが、皆さんはどうお感じになるでしょうか。
とても見応えのある作品でした。

キーラの「つぐない」、少年の贖罪の「君のためなら千回でも」など、
子供の嘘を描いた作品にはなぜか良作が多い。

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