原作 重松清
演出 梶原登城
脚本 羽原大介
音楽 大友良英
出演 堤真一/小泉今日子/池松壮亮/西田尚美/塚地武雅/古田新太/徳井優/小市慢太郎/平田満/神山繁
高校三年になりアキラ(池松壮亮)は受験勉強に励む。アキラと離れて暮らしたくないヤス(堤真一)は広島大学への進学を勧めるが、アキラは内緒で早稲田大学を目指し邁進する。アキラの本心を知ったヤスは寂しさのあまり激怒し、東京に行くなら学費も生活費も出さないと言い放つ。
たえ子(小泉今日子)たちの計らいでアキラは照雲(古田新太)の寺・観音院へ下宿し勉強を続ける。たえ子、幸恵(谷川清美)や葛原(塚地武雅)は、ヤスが子離れして自立するための"お試し期間"にちょうどいいとアキラの家出に賛成する。
一方、ヤスはアキラのいない寂しさに耐え切れず、毎晩浴びるように酒を飲み、たえ子の店「夕なぎ」を出入り禁止になっても他所で飲み歩き、一ヶ月ほど経ったある日、ついに栄養失調で倒れてしまう…。
この後編は、
アキラの節目節目のヤスの親としての成長と、
ほぼ自分の半生をアキラの成長を楽しみに、それだけに懸けて生きてきたヤスの心の旅路が描かれています。
酒とタバコと喧嘩が大好き。しかし、それもアキラとの暮らしがあればこそ。
それを知っているがゆえに、父の寂しさを思い、実家のアパートの窓をみつめるアキラの
親離れの試練は、これは片親で育った人には特に響いてくるものがあるのではないかという気がしました。
想いが2倍というか、、密度の濃さを感じるのです。
このドラマを観ていると、「子育ては親育て」というのが
終盤、ヤス自身の口からも語られるのですが、実際本当に、
子供の成長のその時の試練を、親子で乗り越えることで、初めて親として成長する―、その繰り返しなんだという事が解ります。
ヤスが寂しさを乗り越え、列車の息子に届けとエールを贈れるようになったのも、
その時のヤスの行動を読んで、素直な親を思うアキラの手紙のおかげ。
親はこういう風に子供に育てられることもある。ステキな手紙でしたが、
それから数年後。ヤスはもう一度、アキラの自分に当てたものではない「手紙」によって
またひとつ、壁を乗り越える勇気を貰うのですね・・・。
「父の嘘」それを知らなかった時でさえ、父と過ごした全ての時間で、
それが真実だったと思える、濃い父と息子の暮らし。
アキラのその文章を読み終えたヤスの涙は、いろいろなものも洗い流すような、
そんな涙だったように思います。
とんびが鷹を産んだと揶揄されながら、
けれど、ヤスは偉くならなくてもいい、オレはお前たちの「故郷」だと、
かつて幸せだった日に、妻とアキラと過ごした浜で言うのですね。
本で読む分には自然なせりふも、実際に親子の間で交わされるとなると、気恥ずかしくなるようなセリフだったりしますが
豪快な広島弁で天真爛漫な昭和の男、堤さんの口から出ると違和感がなく、
愛情に満ちた池松くんの遠慮がちなうかがうような広島弁もよかったです!
好きなシーンはたくさんあり過ぎて挙げられないほどですが、
やはり、旅立ち前夜の親子の食事シーンと、翌日の別れのシーンでしょうか。
アキラにとっての旅立ちは父(故郷)からの旅立ちだという、胸の詰まる別れのシーンがよかった・・・
父も息子も同じく寂しい。しかし、それを相手を思いやることで乗り越える時でした。
テレビドラマとは思えない丁寧な時代の再現。そのスタッフの苦労はコチラの、スペシャルやブログで
映像、キャストとも、全てが素晴らしいステキな作品でした!