ごめんなさいと言いたかった。
ありがとうと言いたかった。
製作年度 2014年
上映時間 107分
原作 さだまさし 『サクラサク』(幻冬舎刊『解夏』収録)
脚本 小松江里子
監督 田中光敏
出演 緒形直人/南果歩/矢野聖人/美山加恋/津田寛治/嶋田久作/佐々木すみ江/大杉漣/藤竜也
「火天の城」「利休にたずねよ」の田中光敏監督が映画化した家族ドラマ
大手家電メーカーに勤める大崎俊介は仕事こそ順調だったが、家庭では妻との関係は冷え切り、2人の子どもたちともギクシャクしてしまっていた。そんな時、父の俊太郎が老人性痴呆症となってしまう。家族は俊太郎に手をさしのべる様子を見せず、そのことに失望してしまう俊介だったが…。
少子化、高齢化社会まっしぐらの日本の現状において、
どうしても避けて通れないテーマであると思うのだけど、
思っていたほどには重くなく、しかし、この後いつか私たちが当事者になった場合に
救いとなるヒントは確かにある。年代によって感想は分かれるかもだけど、
とても優しくていい作品だと感じました....。
老いるということ。
それは本人にとっては、何処かに跳んでいってしまい、自分が何者なのかも忘れてしまうという恐怖と、
そういう記憶の喪失がなくても、大切な者たちを縛り、果ては疲弊させてしまうという恐怖。
藤竜也さんの演技が素晴らしい・・・胸に迫ります。
迫りくる老いの酷さ。。。ここでは父親の俊太郎の、
一番幸せで、忘れ難い大切な想い出――
それすらも翳んでいくことの言い知れぬ恐怖感であり、
息子の大事な嫁に迷惑をかけてしまうことへの羞恥心と罪悪感。―
もう、壊れてしまっていたけど、俊介はその難破船の舵をとり、
バラバラの家族を乗せて旅立ちます。一家の初めての旅は70年前の父親の幸せを取り戻す旅でした。
人は何も持たずに生まれてきて、
親の愛情に包まれて成長し、やがて夫婦となり、、子に愛情を注ぎ・・・
老いて、、子供に返っていく。。。。
この結末を「キレイごとではないか」認知症を抱える家族は思われるかも知れない。
でも――そういう事ではないのです。もっと、、老いてからではなく、その前の人生。
どれだけ慈しんで子や孫と過ごしてきたか。
緒形直人演じる俊介の行動は、意図せずとも、家族を取り戻すだけでなく、
やがて訪れる自分の老いの未来を照らすことに繋がっていく。。。そう感じました。
この大崎一家の姿を通して、そのことに今から気づいて欲しい、
誰でもやがては老いる。しかし、その前に、まだ若い時から、知ってほしいこと....
それがこの映画にはあると思います。
老人を抱える世代だけでなく、今まだ若い方にも観て欲しいと思った作品でした。
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