制作年度 2014年
上映時間 119分
原作 浅田次郎『柘榴坂の仇討』(『五郎治殿御始末』所収)
監督 若松節朗
脚本 高松宏伸/飯田健三郎/長谷川康夫
音楽 久石譲
出演 中井貴一/阿部寛/広末涼子/高嶋政宏/真飛聖/吉田栄作/藤竜也/中村吉右衛門
主君・井伊直弼の仇を追い続ける男と、武士を捨て車引きとなり孤独に生きる
刺客の最後の生き残りの男が、暗殺から13年後に迎えた邂逅の行方。――
安政七年(1960年)。時の大老・井伊直弼に仕える彦根藩士の志村金吾。
桜田門外で暗殺者集団の襲撃を受けた際、直弼の警護役を務めながらその命を守りきることができなかった。その失態を恥じた両親は自害するも、自身は切腹を許されず、逃亡した水戸浪士を討ち取れとの藩命が下る。以来、献身的な妻セツに支えられ、仇を捜し続ける13年。時代は明治へと変わり、武士の世は終わりを告げ、彦根藩もすでにない。にもかかわらず、金吾の仇討ちへの執念は揺らぐことはなかった。そしてついに、18名の刺客の最後の生き残り、佐橋十兵衛の居場所を知る金吾…。
大久保利通の暗殺等、倒幕派寄りの視点で描かれた流浪人・剣心に対して、本作は
同じ幕末を舞台にしていても、武士の心情に迫る、桜田門外の変により主君を失った彦根藩士が主人公。
今年の邦画、劇場鑑賞作、ここまでハズレなし!とってもヨカッタです
序盤に描かれる井伊直弼の人物像。
金吾が近習役となったその日から、自分が命をかけて護るべき殿に魅了される幸せ・・。
風流であり、身分の垣根を超えて人との出会いを尊び、
しかし、英断に際しての覚悟の決まった人物であることが、
桜田門外の変以降の、金吾の武士の矜持を失わせず、苦節十三年の時を支える。
以下、ちょっとネタバレ気味感想(結末は回避)です。
明治となり、武士も刀を捨て、髷を切り、、生きる為に新しく職をみつける者、
それが巧く行かずに辱められている、とある光景に遭遇する金吾と偶然再会した友(高嶋政宏)。
あってもちっとも不思議じゃない廃藩置県後の、とある街角の出来事に、
今は姿かたちを変え、精神的支柱を失い街に散っている、心はサムライのままの人々は…―
言っても詮無い事は口にせず、
ボロは着ててもココロは錦、、、武士の潔い美意識に徹した金吾の人生。
口に出さねど、逼迫した生活の中で、妻へのいたわりも忘れず、
妻もまた一切の愚痴や不安を口にせず。武家の妻女として当然のように夫を支える。
尊敬に値する主君に仕え、出来た妻を娶り、、、
あの日、雪さえ降っていなければ―、、の金吾の仇討ち人生ではあるけれど、
生き残り、刀を捨て名を変えて孤独を友とし生き続けた佐橋十兵衛の十三年もまた同じ。
そして運命の仇討ち禁止令が発令されたその日、
あの日と同じ雪の降る中、辿り着いた柘榴坂。。。
さあ、、殺ってしまって全てから解放されるのだ.......この時を待っていた。追う者も、追われる者も。
その二人をじっとみつめる一輪の寒椿。それは
金吾が心底慕った主君、直弼の姿ではなかったか・・・そう思えました。
恭子ちゃん関連では、名作「それが答えだ!」(三上博史主演)、「夜明けの街で」ですが、
「振り返れば奴がいる」も、「恋ノチカラ」も大好きだった若松監督の作品は沢山ありますが、
その中でも珍しく寡黙な男二人の生きざまを見つめ続けた本作は素晴らしい。
女も、袂を握りしめて、声を押し殺して男泣きする。…―そんな作品。
どうぞ、ご夫婦で、いえ、お一人ででも。是非劇場でご覧になっていただきたいデス。
数年前にテレビのSP版で制作された『遺恨あり 明治十三年最後の仇討』(源孝志+藤原竜也)は、本作とは逆に
開国派であったが為に父を惨殺され、その仇を追う青年の、立場は逆でも状況は同じ、な
この日本の動乱期を生きた最期の武士のドラマがよぎりました。