アイルランドから追放された高潔な男の物語
原題 JIMMY'S HALL
2014年 イギリス
脚本 ポール・ラヴァティ
監督 ケン・ローチ
出演 バリー・ウォード/シモーヌ・カービー/ジム・ノートン/アンドリュー・スコット
1932年、国を分断した悲劇的な内戦が終結してから10年後のアイルランド。アメリカで暮らしていた元活動家のジミー・グラルトンが、10年ぶりに祖国の地を踏み、リートリム州の故郷に帰ってきた。かつて地域のリーダーとして絶大な信頼を集めたジミーは、気心の知れた仲間たちに歓待され、昔の恋人ウーナとも再会を果たす。ジミーの望みは、年老いた母親アリスの面倒を見ながら穏やかに生活すること。しかし、村の若者たちの訴えに衝き動かされ、内にくすぶる情熱を再燃させたジミーはホールの再開を決意し、仲間たちも協力を申し出る。かつてジミー自身が建設したそのホールは、人々が芸術やスポーツを学びながら人生を語らい、歌とダンスに熱中したかけがえのない場所だったのだ。やがてジミーの決断が、図らずもそれを快く思わない勢力との諍いを招いてしまい……。
10年後のアイルランドが1932年といことで、この人物もまた「麦の穂をゆらす風」の
デミアン達と同じ時代を戦った人物だということで、
登場人物を変えた続編的なものかと思いながら鑑賞。
だけど、
同じ独立問題が根っこにありながら、本作は監督が伝えたいものが少しだけ違っていた。
そもそも歴史上の重要人物でも偉人でもないジミー・グラルトンって、全く知りませんでした。
しかし、アイルランドでは語り継がれる"名もなき英雄"なのだという・・。ソレは何故か?
今は朽ち果て荒れ放題のJimmy's Hallの再建を機に、
再びカトリック教会と地主層に理不尽に弾圧されるジミー。
彼が野を駆け、野に生きた労働者でありながら、そのリーダーシップで
自由を求める闘いに再び巻き込まれていく物語は、ジミーの人間性に焦点が置かれていて、
内戦終結後も庶民は弾圧を受け続け、自由な教育や娯楽を奪われたままの若者を憂い
故郷の民衆に請われて立ち上がっていく姿を、ゆっくりと追う展開。
ケン・ローチ作品としては直球の、観やすい作品となっています。
バリー・ウォード以下、敵対する神父役の2人もみんなアイルランド・ダブリン出身で、
幼馴染でジミーの想い人役のシモーヌ・カービーはアイルランド・エニス出身。拘っていますね~。
――昨年秋のスコットランドの独立投票を思い出しながら鑑賞しました。
賛成派にショーン・コネリーやアラン・カミングと共に勿論ケン・ローチ監督の名が上がっていて、
劇中のセリフに、現代の若者に託す、自由への想いの深さが読み取れる作品でした。
思想的なものを抜きにしても、本当に豊かな人生とは何か?
多くの今の日本の若者に観て貰って、、監督のメッセージが伝わるといいな~と思いました。