よろこびも、かなしみも、この大地が教えてくれた。
愛するもの、すべてがここにある。
原題 NIRGENDWO IN AFRIKA/NOWHERE IN AFRICA
製作年度 2001年
製作国 ドイツ
上映時間 141分
原作 シュテファニー・ツヴァイク
脚本:監督 カロリーヌ・リンク
出演 ユリアーネ・ケーラー/メラーブ・ニニッゼ/レア・クルカ/カロリーネ・エケルツ/マティアス・ハービッヒ/シデーデ・オンユーロ
1938年4月、少女レギーナと母イエッテルはナチスの迫害を逃れるため、故郷のドイツを後にし、先にケニアに渡っていた父ヴァルターのいるロンガイの農場へとやってきた。ドイツでは弁護士をしていたヴァルターもここでは農場で働く一介の労働者。予想を超える過酷な生活に、お嬢様育ちのイエッテルは耐えられず弱音を吐いてばかり。一方ヴァルターは、欧州情勢の悪化に、残してきた父や妹の安否が不安でならない。そんな2人を尻目に、レギーナは料理人のオウアやケニアの子どもたちとすぐに仲良くなり、アフリカの大地でたくましく成長していく…。
既に祖父は経営していたホテルを没収されていたが、この時はまだ必要最小限の荷物を持って
ドイツから脱出できると、元弁護士の父から呼ばれて母と共にアフリカの地に降り立った、少女レギーナの目線で語られるユダヤ人一家の10年間。
2002年度のアカデミー最優秀外国語映画賞を受賞した本作は、原作者シュテファニー・ツヴァイクの自伝を元に映画化されたそうで、
レギーナが原作者なのですね。
自伝とはいってもまだ就学前の幼い少女の目に映った両親の関係が、どの程度正確な記憶なのか、
或いは映画用に脚色されたものか・・?
このポスターを見る限り、レギーナの物語のようですが、実は母イエッテルの自分探しの物語だったように思います。
母国ドイツにおいて、生活に余裕がある時には優しい母だったイエッテルは、
実は差別主義者であり、生活に必要な冷蔵庫を買うお金で(アフリカに住むというのに)高価なドレスを買っていくような、無知で身勝手な女性だった。
都会で何不自由なく暮らしていたのは夫も娘も同じ。
それでも「肉が食べたい!」と癇癪を起こす、無い物ねだりを口にする母イエッテル
ドイツを発つ前にヴァルターの父はイエッテルに「より愛している方が弱い」と意味深な言葉で送り出します。
「息子は心からキミを愛してる」って、、この祖父は「解って」いたんですよねぇ。。。
どこがいいのかワカラナイこのイエッテルを、
突き放されても愛し続けるヴァルターも、アフリカでやはりよそ者だと感じていて―
夫婦は到着初日からすれ違いをみせていて、
子供がいるのに親としての愛情も気配りもないイエッテルには魅力を感じないのですが、
料理人のオウアに"小さなメンサブ(奥さん)"と呼ばれた最初の出会いから心を開いたレギーナとオウアの関係がとても優しくて救われます。
この夫婦の関係は、イエッテルの感情によってグラグラと危ういものになったり、
弁護士に戻って、家族にも祖国にも必要な仕事をしたいと心に秘めるヴァルターの孤独を深めることになるんです。
特に、自分にはこのイエッテルの、夫の友人に向ける最初から媚びたような視線が理解できず…
埃っぽいアフリカでの夫はダメで、初めて会ったアフリカに馴染んだ男なら良かったの?
それからこの夫婦が諍いを繰り返す度に、コレでもう修復不可能か?と思いきや、
イエッテル主導でくっついたり・・という部分もイマイチ解り辛いこの女性。
ヒトは変わるものだけど、いつも利己的で大人になれない彼女が後半娘に言う
「誰もが同じだと思うのは愚かなこと」とか
「違いにこそ価値がある」って言っても、ちょっと白々しく思えてしまいました。
そんな両親の不仲を知りつつ、アフリカの寄宿学校で差別を受けようとも
すくすく素直に成長するレギーナがとっても可愛い♪
戦争が終わり、このままケニアに残りたいという妻とドイツ再建に貢献したい夫、
ここでもすれ違う二人でしたが、いかにナチスが滅びても、
見知らぬドイツ国民が全て敵に回ってしまったユダヤ人の心理としては、複雑な帰郷に違いなく、
ここは列車の他の帰国するユダヤ人家族の表情とも理解出来る場面でした・・・。
別れの日、小さなメンサブに、二人(両親)を支えて導くよう言葉をかけるオウアの言葉が温かく、
この二人の微笑ましい姿があったので、141分という長い作品を最後まで見続けられたと言えます。
2002年度のアカデミー最優秀外国語映画賞を受賞ということですが、
評価も好みも分かれる作品だと思いました。
これからBSで録画、視聴した作品を少しずつアップしていけたらなぁ〜と思っています。