「お前を殺して、俺は死ぬ。」
愚かに、無様に、それでも生きていく。
製作年度 2012年
上映時間 119分
脚本:監督 赤堀雅秋
音楽 窪田ミナ
出演 堺雅人/山田孝之/綾野剛/谷村美月/高橋努/山田キヌヲ/坂井真紀/安藤サクラ/田口トモロヲ/新井浩文
劇団「THE SHAMPOO HAT」の赤堀雅秋が作・演出・主演を手掛けた戯曲を、彼自らの演出で映画化したヒューマンドラマ。
小さな町工場を営む中村健一は、5年前にひき逃げで最愛の妻を失って以来、妻との思い出に囚われて絶望と孤独の日々を生きていた。一方、2年の服役を終えて出所したひき逃げ犯の木島宏は、相も変わらぬ傍若無人な振る舞いで反省とは無縁の生活を送っていた。そんな木島のもとに、“復讐決行日”までをカウントダウンする匿名の脅迫状が届くようになるのだが…。
公開翌日の日曜日に観たのに、感想が今になってしまいました。
これは重苦しい作品だと解っていましたが、山田クンの悪っぷりも観たかったし、
堺さんの侍っぷりにも惹かれたし、綾野くんも新井浩文さんも、トモロヲさんまで出演をあっては見逃すのは勿体無い!
役者に惹かれて行って来ましたが、なかなかよかったです!
他愛のない会話があった、平凡な日常――
中村健一が失ったその、「平凡な日常」を、
手にしたくて、でも、方法がワカラナイ淋しい大人たち・・・
数人の平凡な人生を知っている中村側の、青木先生とその同僚教師を除くと、
この作品の登場人物は、そんな淋しい大人で埋め尽くされています。
喪失感を抱えて5年。
中村健一は埋める事が出来ない孤独の果てに、自分の人生を投げ打って
木島に復讐をしようと、その一念で決行の日を待っていた。
まるで死に場所を求める侍のように―。
その彼がつかの間、レンタルしたホテトル嬢・ミカ(安藤サクラ)も、
木島に危うく殺されそうになる男(田口トモロヲ)も、
逃げられたはずなのに手篭めにされた関由美子(谷村美月)も、
木島の友人の小林(綾野剛)も―。
愛情とか共感とか、、そんなものを知らず、
淋しいから、なんとなく誰かと繋がっていたくて、
自分の声を聞こえない振りしてつるんでいて・・・それをどこかで木島自身も感じている。
木島の狂気も、やはり孤独と恐怖が拍車をかけていたのではないだろうか。
「健一さんには幸せになってもらいたい」としながらも、
どこか木島への憎しみが捨てきれない青木先生(新井浩文)が
小林に向かって放った「平凡って、」のセリフが刺さりました。
長く、暗い、絶望の時を描いた作品ですが、
後味は悪くない。
中村にもう一度、他愛のない話、中身のない話で満たされる日が近づいている予感が嬉しい
主題歌に『星影の小径』が使用されているのは嬉しい驚きでした。
昔、ちあきなおみさんのカバーアルバムからダビングして貰ってよく聴いていました。
この作品のエンディングに、優しいこの曲が流れて、本当にホッとしました。