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ふがいない僕は空を見た

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生きる。
それだけのことが、
何故こんなに苦しくて愛おしいのだろう。
製作年度 2012年
上映時間 142分 映倫R18+
原作 窪美澄『ふがいない僕は空を見た』(新潮社刊)
脚本 向井康介
監督 タナダユキ
出演 永山絢斗/田畑智子/窪田正孝/小篠恵奈/三浦貴大/銀粉蝶/原田美枝子
高校生の卓巳(永山絢斗)は友人と出掛けたアニメの同人誌販売イベントで、アニメ好きのあんずこと主婦の里美(田畑智子)と出会う。やがて二人は深い仲になり、里美は卓巳に自分の好きなアニメのキャラクターのコスプレをさせ、情事にふけっていた。そんなある日、卓巳は前から気になっていた同級生の七菜(田中美晴)に告白され……。

今作のテーマは「性」と「生」。
長い物語は、コスプレ主婦の里美とコスプレ情事に耽る高校生の卓巳との関係を、
時間軸をずらしながら、その心理や環境の変化を刻んでいく。

映画は高校生の卓巳役の永山絢斗と里美を演じる田畑智子がダブル主演だけど、
実際画面の占有率としては、2人のエロいシーンや、それぞれの家族のシーンが多いものの、
この作品で主役を食ってしまっていたのはやはり
卓巳の同級生で、バイトに追われながら極貧生活を強いられる福田を演じた窪田くんの演技。

この作品の登場人物たちの多くは、自分勝手で、大人になりきれないオトナ。
そんなオトナから、生は受け継がれる…


高校生を情事に引き摺り込む里美は、努力が報われない不妊治療や体外受精を本当はやりたくない。
生むことで追い詰められている主婦・里美―。
無理解な夫と、それを強要する姑のいる現実から逃れたい、アニメの世界を引き摺る女。
その結婚すら過去のトラウマから逃れる手段であって、そもそも愛など、、あったのか?

助産院をしながら育ててくれる母親は、高校生の卓巳をもその現場に引きずり出す。
云わば卓巳は生の誕生の現場で生活をしている。
父親は不在だけど母親に守られて生きてきた彼は、普通の高校生だった。
あんずに会い、性に彷徨い悩むまでは―。

その卓巳の親友・福田は、男を作って借金を作って家を出て行った母に代わり、
認知症の祖母の面倒を見、バイトに明け暮れ極貧生活を送っている。
福田は、ギリギリの状況で生と闘っていた。。。

そんな福田の生活を支えるコンビニには、嫌らしい店長と、同じ団地に住む高校生あくつ、
ワケあり青年、田岡(三浦貴大)がいて・・・
頭を下げても男の意地は捨てないで踏ん張っている福田に、フクザツに絡んでくる。

自分の行動に責任を持つのがオトナだと思うのだが、
里美や福田を追い詰めていく身勝手な親たちや、
親になって欲しくない、何でも他人の所為にする妊婦の夫や、
子供を指導するなんてムリな教師とか、、結構な割でこの世にはいそうな気もする連中。
この3人を取り巻く人たちの、微妙に悪意のある心の揺れの表現も、
清々しいほどに描かれながら―

結婚してハッピーエンドではない、その後の現実。
命の誕生の後の、誰もが幸せにと願って誕生させたはずの命が、厳しい現実を生きていく様を、
二人の高校生に関わる駄目な大人を描くことで痛々しさは増す。

追い詰められた二人の高校生には、どんな解放が待っているのか?

施しは要らないと決めていた福田がおにぎりを貪り喰うシーンに眼が痛くなりました。
福田は人の善意に救われ、
卓巳は母の言葉に救われるのだけど、

世界中の人の上にある、誰にも平等な「空」。
悲しくて寂しくて凍える夜も、明けない夜はないから、
晴れの日には心を清められるような青い空が、何か知らない明日を予感させてくれるだろう。
そう。明日も生きていかなくちゃ。
そんな声が聞こえてきそうな、作品でした

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