刀でなく、そろばんで、家族を守った侍がいた。
製作年度 2010年
上映時間 129分
原作 磯田道史『武士の家計簿「加賀藩御算用者」の幕末維新』(新潮新書刊)
脚本 柏田道夫
監督 森田芳光
音楽 大島ミチル
出演 堺雅人/仲間由紀恵/松坂慶子/西村雅彦/草笛光子/伊藤祐輝/大八木凱斗/嶋田久作/中村雅俊
代々加賀藩の財政に携わり“そろばんバカ”と呼ばれた下級武士が、妻の支えを得ながら一家、そして藩の財政を切り盛りしていく姿を描く。
会計処理の専門家、御算用者として代々加賀藩の財政に携わってきた猪山家八代目の直之(堺雅人)。江戸時代後期、加賀百万石とうたわれた藩も財政状況は厳しく、加えて武家社会には身分が高くなるにつれ出費も増えるという構造的な問題があった。直之は、家財道具を処分し借金の返済にあてることを決断し、猪山家の人々は一丸となって倹約生活を実行していく。
時代劇なのに、剣を使うシーンが全くない、
江戸時代のいわばサラリーマン家庭が、お家の財政困難に際し、
また家庭の財政破綻を目前に奮闘する様子と、その中で起きる騒動やすれ違いを描いた物語。
原作がとある武家の家計簿であったことは知っていたけれども
そこに時代を生き抜いてきた市井のひとの、慎ましくも温かな家族のドラマを感じ、
経済不安の現代の私たちに届けてくれたのがイイですね
御算用者でありながら、借金の総額は年収の2倍にも膨れあがっていたというのに
なんともお気楽な直之の両親に、中村雅俊と松坂慶子が憎めないゆるさで
子供時代の直之を見守る祖母の草笛光子さんも相変わらずの存在感でした♪
そんな中で新しい家族を持ち、子育ての中でお家存亡の危機を迎える
直之と妻の質素倹約に励む姿と、親の姿を見て育つ息子・成之の関係がメインに描かれ、
世間体を気にせず、倹約を工夫で乗り切る明るい家庭の、
ある日の記憶に焦点があてられるのですが…
どんなに貧しくても、心まで貧しいわけではない。
自分の、何を持って家族を護るのか?という父の背中―。
厳しく叱責する親の心は、大切な我が子に伝わるのか?
「子供は忘れるんですよ・・・」そうなのです.......。
でも、悲しく辛い思い出は、親も子も忘れない…―
力むことなく大らかに生きる。
猪山家の人の生き方を森田監督らしいタッチで、大げさな笑いをとらないところも好いし、
犀川を行く3人が観れたラストが良かったです