原題 LE GAMIN AU VELO/THE KID WITH A BIKE
製作年度 2011年
製作国・地域 ベルギー/フランス/イタリア
上映時間 87分
出演 セシル・ドゥ・フランス/トマス・ドレ/ジェレミー・レニエ/ファブリツィオ・ロンジョーネ/エゴン・ディ・マテオ
もうすぐ12歳になる少年シリル。父親は彼を児童養護施設に預けたまま行方知れずに。シリルは自分が捨てられたとは露とも思わず、父親を必死で捜し続ける。そんな中、美容師のサマンサと出会う。彼女は、なくなった大切な自転車を取り戻してくれた。そしてシリルは、サマンサに週末だけの里親になってくれと頼み、2人で父親捜しを続ける。やがて、ようやく父親を見つけ出し、再会を果たしたシリル。ところが父親は喜ぶどころか、シリルをすげなく拒絶してしまう。サマンサはシリルを心配し、それまで以上に彼の世話を焼くようになるのだが…。
コチラも公開当時、評判が良くて観たかった作品ですが、DVDにて鑑賞。
思ったよりも厳しく、痛々しい少年の日々を描いた作品でした。
冒頭から、親に捨てられ、それを認められない認めたくない少年の、恐怖というか
痛々しい姿にもう、胸が痛むのですが、、、
何も持たない子供でありながら、
彼は自分で確かめ、その目で見て、聞いた事だけを信じて進む姿が胸を打ちます。
それなのに・・・苦労して会った父親を前にすると、別人のように理解をみせ、
大人っぽく、嫌われないように振舞う姿が痛ましい。。。
本作は、ダルデンヌ監督が2003年に『息子のまなざし』のプロモーションで来日した際、少年犯罪についてのシンポジウムで聞いた“赤ちゃんの頃から施設に預けられた少年が、親が迎えに来るのを屋根にのぼって待ち続けていた”という衝撃的な話に着想を得て作られた。
と、公式サイトで紹介されています。コチラ
『息子のまなざし』は未見ですが、
男の眼差しで、注意深く、丁寧に、孤独の淵の少年心理を描いた作品だと感じました。
物語は、さまようシリルの行動をひたすら追い、うつむきがちな彼の心を映していくのです。
大好きな父親に見捨てられるという恐怖感。
それを、単に父親の育児放棄とは思えず、お金を渡し望みを捨てきれない子供の心理。
痛いほど掴まれたその痛さに、心を掴まれて、親になっていくサマンサの心理。
1時間半弱というサイズに、凝縮されています。
必要とする者。
必要とされる者。
必要としなくなる者―。
どうしようもない環境で、自分の一歩を踏み出す3人。
11歳の少年シリルが、ある時まで、
ただ父親に捨てられるのを怖れて繰り返す脱走劇には、正直、
ゴネてゴネて、、結局は自分の思い通りにしている我儘さも感じましたが、
結果的に彼はそうして自分で幸運を掴み取り、
犯罪を犯したらこう。家庭ではこう、という教えを学べるひとを掴んだのです。
シリルが自転車の次に取り返したもの――
それは、いつも彼を待っていてくれる人。キケンから守ってくれるひと。
これは、「子」が差し出した手を、まるで友情のように握り返した「親」の話でもあり、
血の繋がりとか、親ってなんだ?と改めて考えさせられました。